妖怪作家の水木しげるさんが先頃逝去されました。
つげ義春を彷彿させるペン画の世界から飛び出す妖怪の数々。
それは人間の心の本質を著わしていたのではないでしょうか。
水木しげるの妖怪にそっくりな人は皆さんの周りにもいらっしゃることでしょう。
彼の作品で印象的なのはNHKがドラマにもした南方の島での不毛で理不尽な戦闘の話でしょう。
私が大学生の頃(1980年ころ)単行本として出版され、すぐに買って読みました。
その後の彼の作品に第二次世界大戦の首謀者というべきオーストリア人、アドルフ・ヒトラーを描いたものがあります。
これも秀作です。彼は本当の妖怪を描きたかったでしょう。ただしヒトラーが妖怪そのもの、というわけではありません。
ごく普通の、純真で努力家で上昇志向の少年、ヒトラーを最強権力を持つ「民族の英雄」に仕立て上げたのは人間社会でした。
そんな人間社会こそ妖怪に他ならない、と水木しげるさんは言いたかったのでしょう。
妖怪は我々すべての人間の心の奥底に巣食っているのです。
最近の映画でアドルフ・ヒトラーを描いたものがあります。
冒頭、こんな言葉ではじまります。
「悪魔が大勝利を収めるために必要な条件は、良き人が何もしない、ということで十分である」