Long time no see…
ボスの異動に伴い、1月までTokyoHeartCenterでの殿部隊をしていたので、2月にチームへ
再合流を果たしました。ブログ更新が滞っており、多方面の方々にご迷惑をかけました。
さて、前回の内容を軸に、臨床での大切な話題について記してみたいと思います。
術後の合併症を防ぎ、良好な回復過程に乗るコツとは・・・
- 術後の状態を受け入れ、心静かに過ごすこと=せん妄予防
せん妄とは意識の変容した状態で、意識不鮮明、転導性、失見当、思考と記憶障害、知覚障害(錯覚や幻聴)、著しい過活動、不穏、自律神経系の活動亢進を特徴とするものです。
※ ステッドマン医学大辞典より
せん妄は様々な疾患で発症します。心臓外科手術でも例外ではありません。心臓手術後のせん妄発症率に関しては特にバイパス手術に多く、51%の発症率と言われております。そうなんです、2人に1人が発症する比較的メジャーな合併症です。しかし、せん妄は過活動型が目立つため、多くは幻覚や興奮といったイメージがあり、そんなに高率で発症しているとは医療従事者でも認識している方は少ないのです。実は傾眠や発動性低下が中心の低活動型がベースに存在しているため、診ている側は、比較的落ち着いていると思ってしまい、徐々に過活動型へ移行していることを見逃しやすいのです。
せん妄は予後予測の独立因子として捉えられており、死亡患者の約35%に術後せん妄の発症を認められています。これは文献でも高率として定められています。
我々は、このようなせん妄を様々な手段を用いてマネジメントしております。そうです、せん妄は医療従事者および家族で管理可能なのです。とくに、痛みと睡眠を管理すること、日内リズムを整えること、安心してもらうこと、当たり前の管理と思われますが、集中治療室やハイケアユニットなどは、非日常的空間です。当たり前が通らない世界であるため、患者さんのサーカディアンリズムは狂います。医療スタッフは可能な限りを尽くし、快適な環境を提供しようと心がけておりますが、なんせ緊急な場面も多く、アプローチに温度差が生じることもあります。
重要なことは、手術を受けられる方は、そのような環境下にあることを受け入れること、
家族様は労いの言葉と日時を明確に伝えること、何かいつもと違うなと気付いたら、スタッフに伝えることです。心臓手術は関わる全ての人間の思いにより、快復へ向かうと思います。
ぜひ、術後せん妄をうまくコントロールし、良好な回復ステージに乗るよう全員で頑張りましょう!
昭和大学横浜市北部病院 リハビリ室 德田