早期より体を動かすこと=廃用予防
今回は術後の合併症で最も多い、廃用症候群についてお話します。
廃用症候群は基礎疾患の治療に伴い、身体活動量が低下することによって引き起こされる、いわば二次的合併症です。ヒトは地球上で生活していますので、産声をあげたときから必然的に重力と共に生活をしています。それが、何らかの病気によって、ベッド上の生活を強いられたとき、筋肉や骨、心肺機能は明らかに低下します。人間は一日ベッド上で寝ていると、活動筋が0.7%低下し、安静期間が7日間になると約10%の活動筋が失われると言われています。
ある意味、1Gの恩恵を受けない状況下では、身体循環サイクルは機能低下し、正常な身体リズムから逸脱します。とくに、顕著に表れる臓器が骨・筋肉・心臓といった、医学的には中胚葉に分類される組織です。よって、原疾患のコントロールがつき次第、可及的速やかに重力を感じる環境に身を置き、自分自身で動かすことが必要です。
しかし、術後は自身での身体活動が困難な場合も多くありますので、我々が動きやすい環境を整え、回復過程に導きます。臨床では「術後で動きたくない」、「このままにしてくれ」といった心の叫びを訴える方もいらっしゃいます。それは当然、私も理解しています。っというか、私は担当する患者さんとの偶像的身体置換を常に考えていますので、考慮しないことはありえません。
ヒトは回復の時期(いわば快気のチャンス)は限られているため、現状(寝たままか身体を動かすか)を両天秤にかけた場合、どちらにベネフィットがあるかを吟味して結論(行動)をしています。廃用を予防し、よりよい自身の生活を勝ち得るためにも、早期から体を動かしましょう!